またワシントンDCに行って来ました―。
国際金融公社(IFC)の弁護士と話しました。
IFCと言えば、世銀グループの中でも、民間セクターへの投資を通じて開発を図る、という事業をしていることで有名で、いわゆる世銀の投資銀行・自己勘定投資部門、というイメージがある。もちろん、投資もコア業務だけど、テクニカル・アシスタンスという技術支援の分野も最近拡大中らしい。特に有名なのがDoing Businessというプロジェクト。各国でどのくらいビジネスを開始・終了し易いかを比較してランキングするというものだけど、これに関わる弁護士さんからお話を聞く機会があった。
①結果がどのくらい見えるか:
・弁護士の仕事だと、取引が無事にクローズする、紛争に一応の解決がなされる、など個別の仕事について
結果が見え易い。さらに、自分の腕次第でかなり結果が変わってくることもあるし、リターンも個人的な報酬につながることも多いから、ある意味で色々と結果も分かり易いし、個人的な寄与度も分かり易い。
・これに対して、Doing Businessのレポートは良い意味でも、悪い意味でも、スパンが長い。Doing Businessのレポート自体はすっごく重要であり、それなりのインパクトはある。だけど、それを参考に、国が投資家を呼び寄せるために制度的に手当てをして、実際に投資家に魅力的な法整備・制度設計をして、それによって投資が促進され、その結果、経済指標が改善し、貧困が削減される、というプロセスはやっぱり長くかかるし、ちゃんとそういった具体的なインパクトを出すまでには一筋縄でもいかないとのこと。弁護士業に比べてスコープが大きい分、自分の全体に対する寄与度はそれなりに小さくなるし、直接的なやりがいは感じにくいとのこと。でも、そういった大きなプロセスの流れに貢献できるのは、それなりに面白いけど、私は気が短いのよ、とのこと(・・)
まあ、大きなものに挑戦するほど直接のやりがいを感じることが難しくなる、というのはある意味古くから言われている対立軸だよなー、っと。
②知的に面白いか:
・Doing Businessは大雑把に言うと、エコノミクス・統計系の人達と法律系の人達に分かれるようだが、法律系の人達は、各国の弁護士達に法制度の整備状況等のサーベイをし、集計し、それを分析する、という仕事だとのこと。もちろん、そうスムーズに情報が集まるわけでもなく、やっぱりプロジェクト・マネージメント的な仕事が中心になるとのこと。知的に面白いか?といえば、そうでもないとのこと。うーん、確かに、既存の法整備の情報を整理して分析するのであれば、「たまらなくエキサイティング」というような状況にはなりにくそうな気もしなくもない。
・なお、エコノミクス・統計系の人達は、集まったデータを別途作ったメトリクスにあてはめて、ランキングをしたりするみたい。このあたりは、どういった指標を使うべきかとか、新たにどんな指標を使うと投資家さん達のためになるか、というのを考えるっぽい。これは、計量経済が好きだったら面白い仕事だろうけれど、個人的にはあまりピンと来ず(++;)
③展望について
・正直、やり直せるとしたら、もう少し弁護士の経験を積んでいくかも、とのことでした。
もし旅行が好き、ということが大切だと分かったら、知的に面白いかは微妙だけど、国際公法も好きなので外交官に転職する道を選んだかもしれないし、もう少し法律的な専門家として社会に貢献したい、と考えたら、裁判官になるかもしれない。その方が社会へのインパクトや充実感の観点からも、今いる部署よりもいいかも、みたいなことを言っておりました。
・例えば、僕がIFCに入る場合、弁護士はコトバで勝負する職業なので、やっぱり語学のハンデは小さくないし、出世に関しても、メリトクラシーではないような側面も結構あるし、そういった意味で、貴方の能力や今までの経歴が最大限に活かせるポジションがあるかは疑問だわ、とのこと。
④マネージメントが好きか
・彼女のように、ある程度、上のポジションになってくると、マネージメントと調整に関わる仕事がかなりの部分を占めてくるとのことだった。IFCにいる人の多くは、マネージメントが好きなようだけど、私はもうちょっとテクニカルというか、専門的な職人的な事が好きなの、とのことでした。そう言った意味では、彼女にとっては、もう少し法務部でがちがちの法律で仕事をする方が向いているかもしれないわ、とのことでした。
⑤法務部
・ただ、法務部はバックオフィスなので、やはり外部のクライアントと向き合って仕事をするわけではないため、開発へのインパクトを感じる、という意味では、やはり間接的になってしまうだろうとのこと。でも、上記①のとおり、仕事のスコープが明確で、結果も自分の貢献もわりとはっきり見えやすいので、そう言った意味で、
ストレスがたまりにくい、と彼女は言っておりました。
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いずれも、なるほどねー、という感じ。弁護士の視点から見て、法務部以外の業務がどうなるか、というのを
聞くことができたのは貴重だった。Doing Businessは、最終目的地にはならないだろうなー、というのが
正直な感想。だけど、Doing Businessのレポートをベースにして、Investment Climateを改革する、
というユニットでは、税制、破産法、担保法、債権法等の分野で、アドバイザリーチームが存在する。
かなり小さいチームらしいので、ポジションは空かないだろうけれど、一度話を聞いてみたいもの。インパクトによってはすっごいやりがいがあるかもしれない。だけど、きっとベストプラクティスは先進国にあるはずで、その意味で、例えば、こういった場所にいて、学びが多いのかは要検討。でも、インプリメンテーションでは新興国に特有のチャレンジがあるかもしれないし、そのあたり、ダイナミックかもしれない。どうなんだろうなあ。
(↓ホワイトハウス)