ナイジェリアにはかなり多くの数の民族があるといわれているけれど、代表的なものはイボ、ユルバ、ハウサだ。ラゴスのように南に位置しているところはユルバの領域であったり、ハウサの多くはイスラム教徒だったりするなど、それなりに違いがあった。
結構、しきたりとかも違うみたいで、色々と話を聞いていると面白い。今回のアブジャへの旅行では、案内してくれた友人がイボ族であったため、ほとんど会った人はイボ族だったから、イボ族への知識が深まった気がする(・・)
たとえば、彼氏が彼女の家に行ってプロポーズをするためにも一定のルールがあるようなのだ。
①挨拶まで
彼氏は一人で彼女の家にはいかない。彼氏の両親やその他の親戚も連れ立って行くらしい。
結婚は二人を結ぶもの、というよりは家族をつなぐ儀式、という考えが強いからだそうだ。
彼女の家に着いたら、彼女のお父さんが応対しなければならない。
彼氏は何も話さず、伯父さんが代わりに彼女のお父さんと話すのだそうだ。
最初の挨拶は決まって、彼氏の伯父さんの方から
「私たちは歩いていたら美しい鳥を見つけた。その鳥を追いかけてきたら、この家にたどり着いたのだ。」
という台詞を言うことではじまるらしい。ロマンチックじゃん。そのあと、
「彼があなたの娘と結婚したがっているのだ。」
と続くとのこと。
②結婚相手の特定
彼女に姉妹がいる場合、彼女のお父さんは、彼氏の伯父さんの挨拶を聞いた後、
「どの娘と結婚するのか?」
と返答して、姉妹全員を玄関先に呼ぶとのこと。そのうえで、結婚相手である彼女を指して特定し、
「この娘と結婚したい。」
というらしい。もしすっごく美人な姉妹とかいたら困っちゃうね、という話をしたら笑っていた。その場にいる誰もがどの娘と付き合っているかとか分かっているんだけど、この儀式はまじめにやるんだって(・・)
③交渉
そうすると、彼氏の伯父さんと彼女のお父さんとの間で交渉が始まる。
彼氏の方に経済力があれば、ワイン(パームワイン)とかヤム(芋みたいなナイジェリアの主食の一つ)とかを大量に持っていくらしい。あと、儀式的に、100ナイラ(ざっくり70円くらい)の現金も渡すらしい。
ところが、最近は景気が悪いから、ワインとかじゃなくて、現金を要求してくるケースも多いとのこと。なかなかシビアね(・・)。まあ、彼女のお父さんが大量のキャッシュを要求してきたら、
なかなかいい結婚じゃない確率も高いかもしれないけれど、それでもみんな払うケースが多いみたい、なかなか大変ですな(++;)。
④村の結婚式
交渉が成立したら、村で結婚式をするらしい。
You may kiss the bride、みたいな台詞はなくて、彼氏の方が彼女にワインを渡すのだそう。彼女がそのワインを飲んだ瞬間にその村で正式に結婚が成立し、取り消し不可能となるとのこと。
ちなみに、プロポーズのWill you marry me?みたいな台詞を言うことはあまり想定されていないらしい。結婚することが決まっているのであれば、あえてひざまずいてそんな台詞を言うこともないじゃん、ということみたい。でも、矛盾するようではあるけれど、最近は映画等の影響もあって、Will you marry me?をやると女の子が喜ぶからやる男性も増えているとかいないとか(・・)
⑤教会の結婚式
村の結婚式が終わったら、教会で結婚式をするみたい。
披露宴はすっごく大規模で、普通の人が結婚する場合でも、1000人とか2000人とか普通に呼ぶらしい。てか、多すぎでしょ。しかも、日本みたいに参加者がお金を持ってくるわけじゃないし。友人や家族は勿論のこと、家族の友人や友人の友人も来ることができるし、みんなで押し寄せるらしい。
知らない人に祝われても嬉しいのかな?とも思うけれど、にぎやかであればあるほどいいのかもしれないし、幸せをもっと多くの人に分けたい、というコンセプトなのかもしれないなあ。
ちなみに、こういった結婚式も、彼氏側が払うことになっているとのこと。
彼氏が十分に収入があれば自分で払うケースもあるけれど、多くは彼氏の両親、家族が払うとのこと。来客には必ず食べ物を提供しなきゃいけないみたいなので、すっごく大変だろうなー。
かなり収入、というか富が物を言う世界だなー、と。少なくても一時的に収入は落ちるものの、もうちょっと世の中の役に立ったり、面白ことがしたい、というような奴はきっと甘ったれた奴として
扱われるんだろうなー、と少し感じてみたりして、あたっ(++)
ちなみに、友人いわく、これだけの人数が集まるから、どの結婚式でも必ず食べ物とかをめぐって
喧嘩が起きたり、なかなかカオティックになることもしばしばだとか。もうちょっとアブジャに入れたなら一つくらい一緒に行ったのに、だって。なんだそりゃ!?と思いましたが、こちらでは結婚式ってそういう位置づけみたいで、かなり頻繁に行われるみたいです、うーん、不思議だ。
* * *
アイデアとしては、彼女は専業主婦になって彼氏の財産で生きていき、彼氏は財産を蓄えるために
働く、というコンセプトが根底にあるみたい。最近は彼女の方が働いても別に大丈夫で、イボの昔のルールも名目的、慣習的なものになっているそうだ。だけど、やっぱり根底にある考え方をすべて取り除くのは難しいし、そういった意味で、やっぱり現状でアメリカのフェミニストが認める平等とはかなり違うのだろうね。
ちなみに、イボでは彼氏が彼女にお金や物を色々渡すし、日本も結納だと似たような流れになるかもだけど、例えば、インドでは彼女の方が彼氏にお金を渡すことも少なくないとか。彼氏に養ってもらうから、前払い?なのかしら。色々な発想がありそうで、へー、って感じ。
やっぱりこの国では稼ぐやつが結婚において有利なようです。日本もそうかな―、まあ、多かれ少なかれどこも国もそうなのかもしれないなー。こういった結婚とか文化的な儀式の話を聞いていると、
どうやって世界を見て、その中に人間を位置付けているのか、というのが少しクリアになる気がして、僕は結構、こういう話は好きだったりします(・・)